第9回研究集会プレ企画終了しました!

第9回研究集会プレ企画 2021年3月21日:オンライン開催
トキメキ――最近,ときめいていますか? は、終了いたしました。

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
皆さんから、たくさんのトキメキの芽が生まれました!
第9回研究集会(2021年8月末開催予定)に向けて、ただいま準備中です。
お楽しみに!!!

研究集会委員参加報告

第9回研究集会プレ企画 「トキメキ-最近,ときめいていますか?」

後藤賢次郎(山梨大学)

 何だか啓発的な(?)問い,「トキメキ-最近,ときめいていますか?」について話し合う,その日が来た。

いったい,どんな話が聞けるのだろう。

どのような論点が出てくるのだろう。

今,この言葉が参加者を魅了する力を持っているのはなぜなのだろう。

 このような,蓋を開けてみなければ分からないといった気持ちでその日を迎えた委員は,私だけではあるまい。

 本プレ企画は,はじめに主旨説明,研究集会委員によるトキメキ例(?)の紹介があったのち,

  • ブレイクアウトルームで4つのグループに分かれ,それぞれにとってのトキメキを話し,感想を言い合う。
  • 全体共有。ちょっとした整理。
  • 再度ブレイクアウトルームで「近い」と思われるグループで交流する。

という順で進行した。

 以下,話し合いに参加した私が,特に1)と3)で感じたこと,考えたことを書いていきたい。

 1)の時間に作成された,参加者のトキメキにまつわるメモには,自分自身の変化,自分を取り巻く環境の変化,仕事・趣味,教育・研究活動,指導している学生・交流のある子どもたち・それらの人々との出会い,日常で見かける自然の営み,心地よいプレッシャー,対話…など,が挙がっている(一部抽象化しました)。これらは,参加者が何にときめいているか,つまり「トキメキの対象」と見ることができるが,実に多様で,その語り方も個別的・具体的なものから抽象的・概念的なものまである。

 また,何かに対してトキメキを感じるとは,どういう心の動きなのだろう。気持ち・感情の中身についての記述と思われるものを,メモから抜き出してみると…未来志向,可能性,初恋,新しさ,何かが始まるとき(に感じる),などが挙がっている。口頭では,わくわく,といった言葉も聞かれた。これから何かが起こることを期待する際の気持ちのようなものだということが窺える。

 このように,それぞれにとっての「トキメキ」が話し合われることで,トキメキが包み込む対象と意味は広がっていった。

 3)では,対話や多文化共生,新しい発見,チャレンジ…といったキーワードで括れそうなグループに分かれ,再度交流した。その際,2)のちょっとした整理において,例として自分たちのトキメキを花の状態になぞらえると,それは種なのか芽なのか,花なのか,種を育てていくには?といった,ある種の型が示されることで,トキメキを持ち寄った私たちをメタ認知したり,そのトキメキを今後どうしていくか,が暗に問われたように思う。

 すると,各グループでは,トキメキが生まれるプロセスや条件,環境についてや,自分たちの気持ちにより焦点化したりして話し合いが行われた。トキメキが生まれる過程には対話を通した新しい発見があると気づきを得たグループや,自分たちはトキメキ不足という認識からトキメクために必要な要件を考えているグループもあった。また,自分から何かを始めてトキメクよりも巻き込まれる形が多いのではないか,いやいや,その場合も実は自分で判断して飛び込んでいるんだと,トキメキにおける主体性が話題になったグループも見られた。

 さて,ここで,冒頭に書いたような,「蓋を開けてみないと分からない」,もっと正直に言えば(笑),色んなことが色んなように出てきて,とっ散らかってしまうのではないか,という気持ちを企画者側としては持っていたことを,思い出しておきたい。その人の前向きな姿勢さえあれば,何に対してもトキメキは生まれそうだなと,少なくとも私はこっそり思っていたのだ。

 しかし,以上に見てきたように,-やや強引な整理だったかもしれないが-トキメキの対象と意味,トキメキが生まれるプロセスや条件,トキメキを感じる私たち自身をめぐる話し合いが行われたことで,トキメキとトキメキに非ざるものの輪郭が,微かに,ぼんやりと見えてきたようにも思う。

 私が参加したグループの中では,「確かに以前に感じたことはあると思うのだけれど,今感じるドキドキ,ワクワクとかとはちょっと違うような…」という声が聞かれた。「初恋のような気持ち」に対しても,そうだと共感できる人もいれば,そうでない人もいた。宝塚やアイドルなどに対するキャーッ♪♪という気持ちと,普段からルーティンとして楽しんでいるスポーツに対するそれとは別,という意見もあった。

 時間軸を設けてみると,どなたも最近のことを挙げていた。このことは本企画の「「最近」,ときめいていますか?」というキャッチフレーズのためもあるだろう。とはいえ,私たちは「今(/これから),ここ」において身近に関われるものに対して,トキメキを感じやすいのかもしれない。だとすれば,例えば中高生時代にスポーツを夢中になって頑張ったなどの過去のことに対して,「最近」トキメクことはある/できるのだろうか。

 また,先ほどはトキメキを,これから何かが起こることを期待する際の気持ちのようなものだということが窺える,と述べた。そうであるならば,例えば,何度も見て結末を知っている物語にも感動することはあるが,その感動はトキメキと呼ぶのだろうか,という疑問も湧く。

 以上のように見てみると,トキメキは私がこっそり思っていた「何でもあり」ぽいものではない。トキメキが生まれない「トキメキ圏外」,あるいは「トキメキ番外地」なるものがありそうだ。つまり私たちは,同じようなポジティブな気持ちや心の動きである,ワクワク,ドキドキなどとあえて区別されるものとして-トキメキ圏外,トキメキ番外地にいることを良しとせず-,トキメキを求めていると言えるかもしれない。

 なぜ今,そのようにトキメキを私たちは求めるのだろう?また,この理屈からすると,トキメクためにはトキメキ圏外,トキメキ番外地が必要なようにも思える。

 こうした私の疑問と感想は,参加された方のほんの一例に過ぎないと思います。ぜひ,それぞれがお持ちの疑問と感想を,再び持ち寄り,それを深めることができたら嬉しいです。あるいは,この人真面目そうに何を書いているんだ,と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが,もし興味を持っていただけたなら,奮って本企画のほうにご参加ください。